コラム
2025.09.30 届けたいメッセージ ライブで魅せるオンリーワン
~愛知県高等学校軽音楽連盟・本夛剛人氏 インタビュー~
部活動としての軽音楽 時代ごとの移ろい
1966年のビートルズ来日をきっかけに、1970~1990年代前半で空前のバンドブームが巻き起こった。当時、ロックバンドに熱をあげていた若者たちは”反体制的”な者も少なくなかったことから、軽音楽部も決して良い印象を持たれる部活とはいえない状況にあったが、時は流れ、高校の軽音楽部が新たな段階へと進化を遂げているという。愛知県高等学校軽音楽連盟の本夛剛人先生に、高校軽音楽部のこれまでの変容について聞いた。
本夛先生は、「1990年代後半~2010年代頃、各地の顧問の先生方の尽力によって、軽音楽部のイメージを刷新する指導や取り組みが行われるようになった。制服をしっかりと着用し、ライブハウスではなく一般的なホールで演奏するなど、学校の部活動として”真面目に””真剣に”活動していることをアピールしてきた。しかし、演奏するのはロックミュージックやポップスミュージック。令和の時代では、そうして根付いてきた”真面目さ”と”真剣さ”を前提に、軽音楽にふさわしいスタイルや環境、表現で演奏させてあげるべき、という次の段階に入っている」と説明する。
ひとつの「ライブ」から届けるメッセージ
大会のステージでの「曲数」にも特徴があらわれているという。
「これまでは、軽音楽の大会で演奏できる曲は1曲のみ、ということが多く、その曲をどれだけ練習してきたか、どれだけ上手に演奏できるかについて競い合っていた。しかし最近では、複数曲を演奏できる大会も増えてきた」と本夛先生は話す。
「これがどういうことを意味するかというと、1曲の披露であれば『演奏』で済むが、複数曲の披露となると『ライブ』になる。例えば、曲間では必ずチューニングや音色の切り替えをする必要があるため、一定の間が生まれる。その間をどう繋いで自分たちの時間にするか、曲ではない部分でお客さんにどうメッセージを届けるか、といった要素が付随してくる。曲数が増えることで、単なるアンサンブルの大会から、ライブとしての大会に変わる」というのだ。本夛先生は、「ロックバンドの存在意義は、自分たちの想いやメッセージを音楽に乗せて届けることにある」と語る。

オリジナル曲は不滅のオンリーワン
現在顧問を務める名古屋市立名東高校の軽音楽部には、毎年おこなわれる入部説明会に50人ほどが詰めかけるという。「説明会では、『軽音楽部での活動を通じて人間的な成長をしてほしい』とはっきり伝える」と本夛先生。入部した生徒は、本夛先生の指導もとでオリジナル曲の制作に取り組み、初心者でも1か月もあれば曲が作れるようになるという。「オリジナル曲というのは、その人がその時にしか生み出すことのできない”オンリーワン”の存在であり、さらに音楽は無形芸術だからこそ永遠に不滅。自分が考えることや自分が感じたことを題材に曲を作るということは教育的な側面も強く、そして、生徒自身の想いを込めた音楽を一生の財産として残してあげることができる。軽音楽部の顧問は、バンドを育てるプロデューサーのような存在です」と話した。
2026年3月開催「軽音楽SUMMIT」で最高のライブを
本夛先生は、2026年3月に名古屋市で開催される第4回全国高等学校軽音楽発表会の実行委員長を務める。「本大会を、新しい段階に入った軽音楽部を示す象徴的な全国大会として位置づけていきたい」としている。
全国高等学校野球選手権大会が「甲子園」の通称で親しまれているように、高校生になじみのある通称をつけたいと、今大会から「軽音楽SUMMIT(サミット)」と名づけた。その名にふさわしい ”頂上決戦”が行われる会場は、約1200人を収容する大型ライブハウス「Lives NAGOYA」だ。配信環境も整っており、生徒たちのステージはアーカイブとしても残せるようにする予定だという。「当日は、勝つ負けるというよりも、お互いの『ライブ』を存分に魅せ合い、楽しんでほしい。会場のスペックを最大限活かして最高のステージをつくれたら」と大会への想いを語る。