コラム

2026.10.19 <大会ルポ>ステージ袖から見た「第13回全国高等学校軽音楽コンテスト」

 全国高等学校軽音楽連盟が主催する「第13回全国高等学校軽音楽コンテスト」が8月18・19日の二日間、埼玉県さいたま市大宮区大門町の「RaiBoCHall(レイボックホール)」で行われました。軽音楽部活動に取り組む高校生の熱い歌声と、大好きな楽器を演奏するまばゆい姿を再び目に焼き付けたくなり、30年以上前の「元軽音楽部生」が会場に足を運びました。

5分間1曲勝負の「部活動」

厚みのある大会パンフレットを受付で受け取ると、会場右手に大きなトロフィーが目に入ってきました。今回で13回を数えるこのコンテストは、トロフィーに歴代グランプリ高校の名前が記されていて、その歴史の重みを感じさせます。

 パンフレットの1ページ目には、「部活動を通して軽音楽活動に励んでいる全国の高校生の目標として、また各都道府県高等学校の生徒並びに教職員の交流および研鑽の機会となること、高等学校における芸術文化活動の向上発展をはかることを目的としています」と大会概要が記されており、大会の運営や司会は連盟の先生方が交代で担当しています。

グランプリ1校、準グランプリ2校、奨励賞4校に贈られるトロフィー
全国高等学校軽音楽連盟の先生方が交代で司会を担当した

 参加したのは、地元の大会を勝ち上がってきた、北海道から沖縄まで30都道府県から47高校の軽音楽部生たち。オリジナルあるいはコピーの1曲を演奏し、ボーカルが「ありがとうございました」と曲の終わりを宣言するまで、5分間の持ち時間を厳守する仕組みです。リハーサル時の衣装は学校の制服で行い、引率の顧問教師がリハーサル日も含め3日間をしっかりサポートすることも求められています。とても「カッチリとした大会」という印象を持ちました。

「学校部活動の中の軽音楽部」の地位向上目指して

 「この大会は、あくまでも教育的な角度で運営している大会です」と強調するのは、大会運営に携わる全国高等学校軽音楽連盟の委員長・佐々木弘人先生(東京)と、副委員長の齋藤教雄先生(埼玉)。

 コンテストが始まった当初は、高校の軽音楽部活動を支援する大きな組織や大きな大会がなく、「軽音楽やロックは不良」という偏見がまだ存在していたそうです。一方で、学校の中では、軽音楽にまじめに取り組む生徒がいたことも事実で、彼らは民間主催の大会に出るしかありませんでした。そこで、佐々木委員長を始めとした有志の先生方が立ち上がったそうです。

 学校部活動として軽音楽部を確立させていくため、「教育の一環としてコンテストを行うことで、学校内外から『軽音楽部はきちんとしているね』と認識してもらうことが大切だった。私が所属する東京の連盟では、20年間それを地道に続けてきたからこそ、今があるのです」と佐々木先生は熱く語ります。 現在、東京では135校が連盟に加盟し、7500人の軽音楽部員がいるそうで、今回のコンテストには、都大会の決勝で頂点を争った3校が出演しています。

全国高等学校軽音楽連盟の佐々木先生(右)と齋藤先生(左)

 年月を重ねるにつれ、大会のレベルは上がってきているそうです。齋藤先生は「高校の部活として学んだ軽音楽の技術や知識は、一生ものの財産として自分の中に残ります。未来の高校生には、とても貴重な3年間を軽音楽部で経験できるということを伝えたいですね」と話します。佐々木先生は、「軽音楽部の活動には、生徒の表現力・思考力・判断力をつけるための環境があります。部活動の中でバンド活動をすることが、これらの力をはじめ、主体性や共働性、多様性を育むことにつながるのです」と真摯な表情で語ります。「生徒への教育ファースト」の立場で続けてきたこの取り組みを守ろうとする二人の姿は、とても印象的でした。

笑顔、充実感、ときどき涙

 ステージに視線を戻すと、制服の着用が義務づけられていたリハーサル時から一転、本番の衣装はおそろいの法被姿、バンド名を背中に記したおそろいのTシャツ、リハーサル同様の制服姿、アロハなどさまざま。メタリカにレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、キッスといった海外有名ロックバンドのTシャツ姿のバンドもいましたが、極端に奇抜な服装は見られませんでした。楽曲は、王道のロックから、ガールズポップ、80年代のアイドル風、メタル、ユーロビート風とさまざまで、全体的にオリジナル曲が大半を占め、ボーカル以外のメンバーがしっかりハモッて歌うバンドが多かった印象です。

 「最後の夏、楽しみつつ、きばっていこうぜ」と円陣を組んでステージに向かうバンド、登壇直前に、お互いの背中を両手で叩いて気合を入れるバンド、緊張しているはずなのに、カメラを向けるとVサインでノリノリになるバンド、満面の笑みを浮かべてステージに駆け出すバンドなど、様々な表情を見せてくれました。

本番前の控室脇には全国楽器協会から派遣されたヤマハや島村楽器のスタッフさんが勢ぞろい。ギターやスネアドラムのチューニング、エフェクターの調整など、本番前の生徒たちを笑顔で出迎えていました。楽器の調整に来る生徒たちを見て、「緊張しているのかもしれないが、あがって歌唱や演奏に影響が出てしまうような生徒はほとんど見ないね」とのこと。やはり、全国の場に集まってくる代表だけあって、場数も踏んでいるようです。

おそろいの衣装を最終チェック中
演奏後、止まらない涙…
肩に気合注入「さぁ、いくよ!」
制服姿での円陣には顧問の先生の姿も
本番前、最後の練習中
スポットライトに照らされたステージ

 演奏終了後は、「楽しかった」「やり切った」と満足げに語るバンドもいれば、伏し目がちに「私たちが出来ることはなんとか…」と語るバンドもあります。

 「高校に入ったら軽音楽部に入ろうと決めて今の高校に入学しました。3年の夏、全国大会に出ることが出来ましたし、歌詞に込めたメッセージも伝えきれたと思います」そう語った愛知県の女子高校生の表情は、とても凛としていました。

「私が歌の入りを間違えなければ…」と泣いていたボーカルは、ホールのホワイエに出てきても涙、涙。応援の保護者の前でも涙が止まりませんでしたが、ドラムを始め、他のメンバーが「演奏し終えてお腹がすいたことだし、何か食べて切り替えようよ」と笑顔で慰めると、ようやく涙が止まりました。そんなメンバー同士のやり取りを顧問の先生が静かに見守る姿も含め、ほほえましい1シーンでした。

「普段は8ビートのロックばかり曲を作って歌っていたのですが…」と語る千葉県から出場した男子高校生は、大会用に作ったロックバラードを初披露。「好きな子とデートする日の一日の気持ちを歌詞にちりばめました。僕は気づかなかったのですが、他のメンバーが、最前列で涙している女性を見かけたそうです。何か伝わったのかな」と照れながら語る姿も印象的でした。

1980年代のアイドルをほうふつとさせる弾き語りも…
審査結果発表の瞬間、会場からは受賞校に対して大きな拍手が沸き起こった。

大学教授や大手音楽制作会社、音楽プロデューサーら5人が、2日間かけてすべてのバンドの審査を行いました。厳正なる審査の結果は、以下の通りです。受賞された皆様、おめでとうございます。

◆

【グランプリ】

北千里高等学校(大阪)「ぴんきーどろっぷ」

【準グランプリ】

法政大学高等学校(東京)「Shamed Sirius」

大谷高等学校(京都)「0.4mm bullet」

【奨励賞】

北星学園女子高等学校(北海道)「知花」

所沢高等学校(埼玉)「千小説」

武庫荘総合高等学校(兵庫)「Buzzy」

名東高等学校(愛知)「光りのライバル」