コラム

2026.10.02 <スペシャルインタビュー>「ふつうの軽音部」クワハリ先生から高校生のきみたちへ

 高校の軽音楽部を舞台にした漫画「ふつうの軽音部」(集英社、原作:クワハリ・漫画:出内テツオ)は、国内最大級の公式マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」で2024年に連載が始まりました。この年の「次にくるマンガ大賞」のWebマンガ部門で1位に選ばれたほか、「このマンガがすごい! 2025(オトコ編)」「マンガ大賞2025」で上位を受賞した大人気の作品で、ファンを公言する著名人も多く、注目を集めています。10月2日には最新刊12巻が発売されました。かつて高校軽音楽部の顧問の経験がある原作者のクワハリ先生に、作品と軽音楽部活動についてお話を聞きました。


登場曲すべてに思い入れがあります!

 「ふつうの軽音部」は、ちょっと渋めの邦ロックを愛する高校1年生・鳩野ちひろが、初心者ながらも憧れのギターを手に念願の軽音部に入部するところから話が始まります。個性豊かな軽音部のメンバーと過ごすことで、部活動を通じて友情や恋愛、さまざまな人間関係を経て成長しながら「青春」を過ごしていく作品です。作品には、Mr.ChildrenやGLAYといった、1990年代~2000年代だけでなく、Mrs. GREEN APPLEやVaundyなど、最近の楽曲も登場します。また、登場人物が歌う楽曲の歌詞と心情がリンクする場面が多く見られます。

 登場する楽曲について、クワハリ先生は「作品で使わせていただいている曲は、思い入れのある楽曲ばかりです。例えばELLEGARDENの『ジターバグ』は、主人公・鳩野がバンド『はーとぶれいく』で初演奏した曲ですが、昔からすごく好きな曲で、私自身が高校の軽音部の顧問をやっていた時に、生徒たちが演奏したこともあります」と振り返ります。「MONGOL800の『小さな恋のうた』とかも結構演奏している子が多いですね。割と最近のバンド曲って難しすぎて高校生がコピーしにくい中、これらの曲はシンプルな構造なので、いまも多く演奏されているのかなと思います」

Ⓒクワハリ・出内テツオ/集英社

想像以上に成長したキャラクターたち

 登場人物のキャラクター設定については「構想段階で完全に決めていたわけではない」と語るクワハリ先生。

Ⓒクワハリ・出内テツオ/集英社

鳩野のライバル的存在・鷹見の場合は、「ただヘラヘラしていて歌がうまいだけの人じゃなくて、何かちょっと屈折したものがあるキャラクターにしようというのは最初から決めて登場させていたのですが、彼の過去編の細部は、描きながら考えていきました」と語ります。登場人物全員が、それぞれ思っていた以上に成長しているそう。特に鷹見のバンドメンバー・水尾については「11巻に収録されている合同ライブ編でスポットライトを当てました。特に、当初思っていたよりも成長しているなと感じるキャラクターですね」と話します。

そんな鷹見や水尾が所属するバンド『protocol.』については、「今、結構バンドの方向性がメンバー間で揺れているところですが、このバンドが唯一、軽音部の活動を超えてプロを目指すみたいなところに行くべきかという葛藤を抱えていて、今後描いていきたいなと思っています」


liveを見る人のもう1つの視点

 最新12巻について、クワハリ先生は「12巻では鳩野の中学時代の数少ない友達が出てきます。また、鳩野の軽音部の先輩で、生徒会長でもある鶴が「もう1人の主人公」のような感じで、彼女の過去編みたいな物語も最後で描いているので、そちらも合わせて注目していただけたら」と見どころを教えていただきました。

なかでも、クワハリ先生が印象に残っているのは第108話。「鳩野の中学時代の友達が、鳩野に対して、ライブで演奏する姿を見る意味を問うシーンがあります。書きたかったセリフが書けたなと思います」と語ります。その理由を伺うと「この漫画は、プロを目指すわけでもない高校の部活のライブを肯定的に描いています。要は、内輪ノリを肯定的に描いている漫画なのです。それってもう一つの側面として、『知らない・全然乗れない人から見たら全然楽しくないだろう』という視点が自分の中にあって、それもちゃんと一つの側面として描くことができました」

毎回単行本では、巻末におまけ漫画が収録されています。クスリと笑える物語のサイドストーリーが多く、今回は「鳩野の中学時代の思い出の一幕」が掲載されているそうです。こちらも必読です。

Ⓒクワハリ・出内テツオ/集英社

バンド活動のだいご味とは

 クワハリ先生は、ご自身も大学時代からバンド活動に取り組んでいたそうです。「コピーバンドで既存の楽曲をやる時は、自分たちが聴いてかっこいいなと思う音を出せて、すごく楽しかったです。オリジナル曲に関しては、この世にない楽曲を生み出して表現するっていうのがすごくいいですよね」

Ⓒクワハリ・出内テツオ/集英社

 作中で出てくる「バンドあるある」については、自分がバンド活動をしていた時の経験がほとんど、と語るクワハリ先生。「初めて合わせてみて、お互い目を見合わせた時の気まずさなんかは、よく経験していました。『弾いてみたら思ってたのと違う…』みたいなことって結構ありますよね」

最近、気になるバンドについては「『171(イナイチ)』というバンドがすごくカッコいいなと思いました。男女のツインボーカルの3ピースバンドで、最近、あまりいないタイプのバンドだなと思って」と語るクワハリ先生。「最近って、音の数が多くて、男性ボーカルの声が高くてうまいバンドが多くて。もちろん、それも好きなのですが、171の場合は、男性ボーカルの人の声がめっちゃ渋くて。1990年代や2000年代のオルタナティブロックのテイストを持っていて、『あっ、こういうの好き』と直感しました」と話します。


高校軽音楽部生へのメッセージ

 最後に軽音楽部活動に取り組む全国の高校生たちにメッセージをいただきました。

「軽音部が他の多くの部活と違うのは、目標が一つじゃないところだと思っています。大会もありますが、必ずしも目指さなくてもいいし、オリジナル曲をやる人もいれば、コピー曲をやって文化祭で盛り上げる人もいます。自分だけの目標を持つのが大切というのと、何であっても、やっぱり音を出すっていうのがすごく楽しい。みんなで音を出すってのはすごく楽しいことだと思うので、楽しみながら、自分たちの目標に向かって頑張っていただけたらと思います」


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