コラム
2026.01.14 <スペシャルインタビュー> 緑黄色社会から高校生のきみたちへ -後編-
撮影:西槇太一
誰もが耳にしたことのある楽曲「Mela!」「サマータイムシンデレラ」をはじめ、最近ではテレビ朝日系ドラマ「緊急取調室」の主題歌「My Answer」を手掛けるなど、世の中に多彩な楽曲を提供し続ける4人組バンド「緑黄色社会」。高校で軽音楽活動を始め、『閃光ライオット』で準グランプリを受賞した彼女たちは、「当時は根拠のない自信があった」と振り返るが、音楽で生きていくことに葛藤がなかったわけではなかったようだ。(敬称略)
勉強や学生生活との両立 たどり着いた将来への決断
『閃光ライオット』へのエントリーに向けてオリジナル楽曲の制作を開始するなど、バンド活動がどんどん前進していく中で、「前に進んでいくみんなの背中をなんとなく見つめていた印象だった」と語るのはキーボードを担当するpeppe。中京大中京高に入学した彼女は国公立大学を目指すコースに入り、当初は勉学に励むつもりだったという。
「昔からピアノを習っていてJPOPも聞いてはいたけど、元々バンドをやりたいという思いがあったわけではなかったので、バン研に入ってみんなからいろいろ教えてもらいました。だから私は、いつもみんなの背中を後ろから眺めていた気分でした」
放課後は毎日プリクラを撮りに行き、短いスカートにカラーコンタクト。高校生活を存分に楽しみ、みんながイメージする「女子高校生」を体現していたというpeppe。「音楽に全力投球というよりは、遊びや勉強もしたかった。子どものころに憧れていた旅行・航空業界の仕事に就きたいという思いもありましたし、全国的にも強い野球部やサッカー部のクラスメートがいつも良い成績を取っていたので、おのずと勉強はしていた気がしますね」

peppeは、メンバーから求められたフレーズをいつも難なくサラリと奏でた。それでも、「青春」をめいっぱい謳歌する彼女の姿に、音楽一筋の長屋と小林は多少の違和感を抱いていたという。長屋は、「練習のスケジュールを組む時に『この日空いている?』と聞いても、『友達との予定が…』とNGが出るケースが多々あったんですよ(笑)」と振り返り、小林も「peppeは確かにその場にいるのだけど、肩に触れようとしたら自分の手が『スッ』と通り過ぎてしまうんじゃないかって、そんな透明人間みたいな感じだった」と例えた。
それでも、大学進学という大きな節目が近づいたある日、長屋と小林に「私たちは大学に進学して音楽を本気でやっていく。peppeはどうする?」と切り出されると、peppeはシンプルにこう答えたという。「私も一緒だよ」
「当時、自分の意識が徐々に音楽にシフトしているという実感がありました。勉強を諦めるというネガティブな意味ではなく、バンド活動をするなかでいろんな選択肢があることを知って、高校生なりにとても前向きな選択をしました。一番大きいのは、みんなをかなり信じていたこと。ずっと見ていたみんなの背中には、ついていきたいと思わせるようなパワーがあったんですよ」と本人は述懐する。長屋は「それ以降、peppeが真の意味でメンバーらしくなって、音楽的な意見や提案をしばしばくれるようになりました」と嬉しそうに話した。
カバー曲として大人気 演奏のコツは
緑黄色社会の楽曲は、大会に参加するためのコピー曲として高校生からしばしば選ばれるという。「女性ボーカルかつキーボードもいるので選ばれやすいのかも」と語る彼女たちに、コピーのコツを聞いてみた。
小林は、「それぞれのフレーズをきちんと立たせること。そのほかは80%でもいいから、自分の見せ場だけは100%の全力で演奏してほしい。たとえばギターソロでいうと、ちゃんと自分でブーストをかけてエフェクターのペダルを踏むとかね。分かりやすく明確にやることが大事」とアドバイスする。

長屋は、「高校時代って、全部のパートが『押せ・押せ』になりがち。そうではなくて、引き算の美学というか、今は誰が目立つ時間なのかをちゃんと考えることができると、おのずとそれぞれのパートが生きてくる」とエールを送る。小林と穴見は、「やっぱりドラムかな。リズムさえ正確であれば、何があっても戻ってこられるし、上手に聞こえる」「ドラムだけはフィジカル・スポーツだと思ってほしい」と話す。また、peppeが「自分の演奏で一杯いっぱいになるのではなく、他の人の音を聞きながら演奏するのがバンドの醍醐味」と話すと、長屋も「ボーカルが歌に集中しすぎないようにすること。やっぱりみんなで合わせてこそのバンドだからね」と同意した。
緑黄色社会から高校生へのメッセージ
最後に、全国の軽音楽生にメッセージを聞いた。
小林は「楽器や音楽を始めたばかりだと、色々なことが分からなくてどうしても正解を知りたくなってしまうと思う。AIも発達してきたり、調べればすぐに正解がわかったりする時代だけど、まずは自分が聞いたり感じたりしたことを自らの音楽や音で表現してほしい。自分にとってオーガニックなものというか、自分のアイデアでやることに全力で取り組んでほしい」と力をこめる。
長屋は「音楽は、スポーツのように『勝った・負けた』もないし、周りからしたら見えづらく分かりづらい。だから、野球やサッカーのようなメジャーな部活と比べると、軽音楽部は評価されたり応援されたりする場面は多くないかもしれない。それは当時自分たちも感じていたことだけど、それでも文化祭などで自分たちの歌を聴いてもらう場を作ると、応援してもらえるようになったりして、すごく嬉しかった。高校生の時は謎の行動力があり、たくさんのエネルギーを持ち合わせている時期なので、迷ったらとにかくチャレンジして、とにかく発信して。『下手だからそんな自信ないよ』という子も、練習してうまくなる過程をライブ配信することだって一つの手だと思う」と熱く語る。

peppeは「なりたい自分をイメージすること。高校時代、学校の階段を『Mステ』の階段に見立てて降りてみたり(笑)、紅白に出る、海外でライブするというイメージも持っていました。言霊という言葉はあながち間違っていない。『馬鹿にできないぞ、小さな種は』と伝えたいですね」とほほ笑む。
穴見は「10代って学校生活のささいなことやちょっとした不安事に影響されやすい。それを全部音楽にぶちまけてみるといいんじゃないかな。ピュアにぶちまけることが出来るのって10代の時だけで、大人になると冷静に作れるようになっちゃうというか。だからこそ、その時にしかできない演奏を楽しんでもらいたいし、本音や本能を発散する『はけ口』にしたっていい。その原体験があってこそ、そこから枝わかれして、いろんな音楽を好きになっていくと思う」と話した。
(終)
緑黄色社会プロフィール:
長屋晴子(Vo./Gt.)、小林壱誓(Gt.)、peppe(Key.)、穴見真吾(Ba.)の4名からなるバンド。愛称は”リョクシャカ”。高校の同級生(長屋晴子・小林壱誓・peppe)と、小林の幼馴染・穴見真吾によって2012年結成。「Mela!」(2020)がストリーミング再生数4億回、「花になって」(2023)が同2億回、「Shout Baby」(2020)・「キャラクター」(2022)・「サマータイムシンデレラ」(2023)が同1億回を突破するなど話題曲をコンスタントに発表。2022年に初の日本武道館公演、2023年~2024年にアリーナツアーを開催、2025年には初のアジアツアーを成功させるなど躍進を続けている。長屋晴子の透明かつ力強い歌声と、個性・ルーツの異なるメンバー全員が作曲に携わることにより生まれる楽曲のカラーバリエーション、ポップセンスにより、同世代の支持を多く集める。