コラム

2026.10.06 <音楽ライターのつぶやき> 高校生でもできる!オリジナル楽曲の配信

軽音楽部で活動する皆さんの中には、すでに自分たちで作詞作曲したオリジナル曲を持つバンドも多いと思います。今回は、オリジナル曲を配信リリースし、「デビュー」する方法をご紹介します。

(読売新聞文化部 鶴田裕介)


3月に愛知県で開かれた「全国高等学校軽音楽発表会~軽音楽SUMMIT~in Aichi」を配信で見たのですが、すでにプロクオリティの楽曲、逆にプロからは生まれなさそうな独特のセンスを持つ曲もあり、豊かな音楽性に嫉妬すら覚えました。

一生懸命作った大事な楽曲を、ライブや大会で披露するだけではもったいない。作品を配信してもっと多くの人に聴いてほしい。そう考えている人も多いのではないでしょうか。実は高校生でも、SpotifyやApple Musicといったストリーミングサービス、サブスク(定額制音楽配信)で作品を配信することは可能なのです。しかも、割と簡単に。録音された音源があること、ちょっとお金がかかることは前提ですが……。


「ディストリビューションサービス」を使った配信

ひと昔前は、バンドが自分の曲をリスナーに届けるのはとても大変でした。CDを全国に流通させるにも、音楽を配信するにも、レコード会社やレーベルを通さなければ難しかった時代が長かったのです。しかし近年は、ミュージシャンの音楽配信を代行する「ディストリビューションサービス」が登場し、レーベルなどに所属していなくても、メジャーのアーティストと同じように配信リリースができるようになりました。

このコラムを書いている新聞記者の私は、レコード会社にもレーベルにも所属していませんが、ここ3年で、個人でアルバム2枚、シングル2枚を配信リリースしました。説明文をよく読んでおらず、数千円を無駄にしてしまう失敗もありましたが、それを除けばおおむね順調に手続きできました。

今回は、「TuneCore Japan(チューンコアジャパン)」(https://www.tunecore.co.jp/)を使った配信手続きを、筆者の体験を交えて簡単にご説明します。

「TuneCore Japan」は未成年の高校生でも、保護者の同意があれば利用できます。配信に必要なのは、①オリジナル曲の音源②ジャケット画像、これくらいです。必須ではありませんが、バンドのアーティスト写真を用意しておくと、よりアーティストっぽくなるでしょう。

配信プランは、1リリースごとに代金を支払う「Pay Per Releaseプラン」(シングル1曲1551円、アルバム1作5225円、いずれも1年)、楽曲やアルバムを無制限に配信できる「Unlimitedプラン」(年額4400円~)があります。「とりあえず1曲配信してみよう」ということであれば、「Pay Per Releaseプラン」から試してみるのがいいかもしれません。

以下は「Pay Per Releaseプラン」の手続きの流れです。

アカウントを作ったら、あとは基本的に画面の指示に従って進めていけばOKです。シングル配信かアルバム配信かを選び、リリース情報を編集します。ジャケット画像と音源をアップロードし、アルバム名や曲名、作詞作曲者、参加プレーヤー名、歌詞などなど、画面の指示に従って入力していきます。これらの情報は一度配信を始めると修正できないため、入力は慎重に行いましょう。

次はストア選択です。SpotifyやApple Musicといった中から、自分の作品を配信したい音楽サービスを選び、配信地域なども選択します。最後に決済(支払い)し、配信審査を依頼します。審査が完了すれば、配信が始まります

以上が、TuneCore Japanを利用した配信手続きです。基本的に指示された通りに進めていけばいいのですが、あらかじめバンド名やアルバム名、メンバーの名前、作詞作曲者名、歌詞などをバンドメンバーで話し合い、きちんと決めておくと、スムーズかと思います。

ちなみに筆者は最近、Unlimitedプランも試してみようとスタータープラン(4400円)を申し込んでみましたが、配信を試みたアルバムは7曲入りで、「最大5曲」という制限に引っかかって配信できませんでした。よく読んでいなかった私が悪いのですが、サポートに泣きついても、「いかなる理由やご利用状況であっても返金等はお受け付けしておりません」との決まりから、返金は断られました。配信を始める時は公式サイトをよく読み、慎重に申し込むことをおすすめします。

国内で利用できるディストリビューションサービスはTuneCore Japan以外にもいくつかあり、無料で配信できるものもありますが、収益の還元率などがそれぞれ違うようです。大切な作品を預けるわけですから、どのサービスを使うかは、バンドのメンバーや軽音楽部の顧問の先生、保護者などとよく相談して決めてください。


配信したら「アーティスト」

作品を配信したら、あなたは立派なアーティスト。いい音楽であれば、各サービスのエディターの目に(耳に)とまってプレイリスト入りするかもしれませんし、再生回数が伸びればランキング入りすることもあるかもしれません。自分たちの曲をインスタやTikTokのBGMとして使ってもらえるようにもなります。Spotifyなどのストリーミングサービスで「軽音楽部」と検索してみると、すでに自作曲を配信している部がいくつか見つかります。軽音楽部名義ではなく、バンド単位で配信している部員もたくさんいるんでしょうね。

楽曲の魅力をアピールするために、様々なコンテストに応募することもできます。高校軽音楽部の部員が、オリジナル曲の魅力を競うコンテストもあります。

♪ 第6回 全国高校 軽音楽部大会 we are SNEAKER AGES オリジナルソングコンテスト

https://www.tunecore.co.jp/wanted/sneaker-ages-original-song-contest2026

※応募の期限は8月31日まででした。お知らせが遅くてすみません。

極端な話、実力さえあれば、世界最高峰とされる音楽賞、アメリカのグラミー賞に挑戦することだって可能です。筆者は2025年、TuneCore Japanで配信リリースしたオリジナル曲を、グラミー賞にエントリーしてみました。体験ルポを記事にしていますので、興味があれば読んでみてください。

♪ 本紙記者 グラミー賞に挑戦!?

https://www.yomiuri.co.jp/culture/music/20251030-OYT8T50097

いったん作品を発表したら、高校生だろうとプロだろうと、肩書は関係ありません。いい音楽かどうか、それだけです。自分たちの作品を、世界に投げかけてみましょう。


一番大切な「レコーディングと音源について」

そもそもの話ですが、バンドのオリジナル曲を配信リリースするにあたって一番大変なのは、レコーディングして音源を制作することかもしれません。TuneCore Japanで配信リリースする場合、音源はレコーディングスタジオなどできちんとレコーディングした音源以外にも、ライブ音源やデモ音源でも配信可能です。音源のクオリティについて、TuneCore Japanが干渉することはないそうです。

レコーディングを請け負うスタジオは全国各地にありますので、地元のプロに相談しながら制作するのが理想ですが、安く見積もっても1曲あたり数万円かかり、高校生の金銭事情からそう簡単ではないと思います。iPhoneやMac用の無料アプリ「GarageBand」でも結構いい曲が作れますので、宅録(自宅録音)に挑戦してみるのもいいでしょう。ロックバンド「ピロカルピン」のギタリスト岡田慎二郎さんは、インディーズミュージシャンの音源製作をサポートするサービス(https://note.com/shinjiro_okada/n/n341edabdddbe)を行っていますので、相談してみるのも手です。

もちろん、質の高い音源であることに越したことはありませんが、「できる範囲」でよさそうです。音量バランスが良ければですが、『教室で演奏した一発録りの音源』だって構わないし、ライブハウスやホール会場などでプロのPAさんがオペレートしている大会録音を使用してもいいですね。ぜひ顧問の先生に相談してみてください。


◇鶴田 裕介 (つるた・ゆうすけ)

読売新聞文化部記者。ポピュラー音楽を担当。大学卒業後、インディーズでのバンド活動を経て、2005年入社。地方支局や社会部を経て、13年から文化部。25年、自身のバンドの曲を第68回グラミー賞「最優秀ロック・ソング」部門にエントリーし、その過程を紙面で紹介。売れないバンドマンとしての経歴を思いっきり仕事に活用している。