コラム

2026.04.17 <大会ルポ> ステージ袖から見た「軽音楽SUMMIT in Aichi」」

高校軽音楽の頂上決戦「全国高等学校軽音楽発表会~軽音楽SUMMIT~ in Aichi」。2026年3月21日と22日の2日間、Lives NAGOYA(名古屋市港区金城ふ頭2)を会場に、全国36の都道府県から54バンドが集結。各バンドが2曲ずつ演奏するライブ形式で、全国の軽音楽部生が頂点をかけて競い合いました。そんな〝魂の歌〟の共鳴を、30年以上前に「元軽音楽部生」だった筆者が舞台裏の様子を交えながら皆様にお伝えします。

大勢の来場者で賑わう会場

祈り、涙、不安、怒り…。

ギターソロの後が走りやすいから、しっかり合わせるように意識しよう―

ドラムの私が抑えるからね―

ステージ下の控室。4人組バンドのドラマーが、ギタリストとボーカルに声をかけています。「大丈夫」と応えながらも、二人ともどこか顔がこわばったまま。なんとか成功させたい…。そう祈るかのように手を組むボーカルの姿が印象的でした。

控室でギリギリまで練習する姿も
メンバーと顧問の先生で気合を入れる。手首には参加バンド全員に配られたラバーバンドが。

スタートの挨拶はしっかり揃えよう―

だよね。真面目な感じも出さなきゃね!(笑)―

終わりはどうする?―

もちろん揃えよう。私が合図する―

大所帯で参加したガールズバンドの部員たちは、本番前の緊張感はあるものの、どこかにぎやかな様子。しかし、演奏を終えて顧問の先生の姿を見つけると、メンバーの一人が涙。先生から「ガールズバンドの王道っぽく演奏できていたね、とても良かったよ」と声をかけられると、張りつめていた緊張が一気に解け、ホッとした表情を見せながら涙を流し続けていました。

ひとりきりの弾き語りスタイルで参戦した女子部員は、「緊張しちゃいますよぉ」と言いながら控室で見せていた不安げな姿から一転、出番直前には背筋をピンとさせ、ローファーと靴下を脱ぎ、はだしのままステージに駆け上がっていきました。その堂々とした歌いぶりは、まるで高校生ではなく、音楽を全身で楽しむアーティストとしてこの目に映りました。

曲の終わりはメンバー全員で一礼
勢いよく飛び出していくメンバー

曲と曲の合間のMCも、バンドによって実にさまざま。「日本の真ん中、名古屋から盛り上がっていきましょう」と大声で飛び跳ねる者、「我々の音楽で、名古屋を征服しに来た!」と白塗りメイクで叫ぶ者、「さあ、座っていないで立ってください。皆さんのジャンプを待っていますよ」と聴衆をあおるボーカルの姿も見られました。

練習の成果を存分に発揮できたバンドもあれば、一方で思い通りにいかなかったバンドも。ずっと楽器を見つめたまま動けないベーシスト、演奏が終わった途端にドラムのイスから崩れ落ちたドラマー、お互いの演奏に納得がいかず無言で片付けをするバンドの姿もありました。

大会を支える人たち

大会実行委員長の本夛剛人先生による「日本一熱い、高校生ロックバンドの頂点を決める戦いを始めましょう」という熱いエールで始まった開会式。最も評価の高かったバンドには、文部科学大臣賞として、日本一を決める戦いにふさわしい〝富士山〟をイメージしたオリジナルの盾が贈られることが発表されました。

この盾は、楽器のボディーに使われている素材で作られており、盾の頂点には、本大会のライブ音源が収録されたEP盤が配置されています。「きょうここで生み出された瞬間、永遠の命を持つ音源」が盾としてずっと保存されることになります。

富士山の形に模して左右非対称に作られた今大会の盾のコンセプトを紹介する本夛剛人・大会実行委員長

本大会の審査は、レコード会社や音楽専門学校などから集まった5人のプロフェッショナルたちが、2日間かけてすべてのバンドの演奏を聴いておこなわれました。そして会場内には、大会の様子を伝えるためのテレビカメラがずらりと並び、名古屋のテレビ局(東海テレビ、中京テレビ、CBCテレビ、メ~テレ、テレビ愛知)が共同で行う動画・情報配信サービス「Locipo」で配信されました。また、大会の司会は、愛知・名東高校放送部の二人が務め、部員の松葉心音さんと彦坂優月さんのアナウンスによって大会はスムーズに進行しました。

演奏に向き合った審査員たち
大会の様子を伝える報道陣
愛知・名東高校放送部の二人が大会の司会進行を務めた
司会の松葉心音さん(左)と彦坂優月さん(右)

ステージ裏の楽器調整部屋には、島村楽器のスタッフたちが勢ぞろい。エレキギターのチューニングやエフェクターの調整、ストラップピンの調整など、本番を直前に控えた軽音楽部員たちを陰で支えてくれました。演奏途中に弦が切れたバンドのメンバーが慌てて調整部屋に駆け込み、弦を張り替えてもらって再びステージに上がっていく姿も見られました。

ストラップピンが外れないようにしっかりネジ止め
本番直前、チューニングを含めスタッフに最終確認してもらう軽音楽部生たち

音楽を通じた大きな学びの場

「本人たちよりも顧問の私の方が気が気でなくて…」

「もう任せていますよ。あとは楽しんでくれれば」

「なんせ田舎から出てきちゃったので、みんなで緊張しちゃって…」

日ごろから部員たちを見守ってきた顧問の先生方からも、さまざまな感想が聞かれました。なんとも言えない緊張感は、実際にステージに上がる生徒たちだけでなく、先生方にも伝わっているのがよく分かります。しかし、全国大会という大きなステージに挑戦する生徒たちを見守る先生方の表情は、みな一様に優しく、音楽を通じて成長していく生徒たちを見届ける教育者の普段の支えや取り組みが、この大きな大会の一助になっていることを痛感させられます。

ライブ終了後は、軽音楽部員たちが地元から持ち寄ったお菓子を他校のバンドメンバーたちと交換し、お互いを応援するメッセージを色紙に書き合います。超絶技巧で会場を沸かせたギタリストの前に、何人もの女子生徒が並ぶような場面も見られました。集められた寄せ書きとともに参加者全員で記念写真を撮影し、大会は大盛況のまま終幕しました。

参加バンド同士で互いに寄せ書きをし、地元から持ち寄ったお菓子の交換も行われた
プレッシャーから解放されて会場は和やかな雰囲気に
本夛実行委員長たちと寄せ書きを見せながら記念写真を撮影

                     ◆

厳正なる審査の結果は、以下の通りとなりました。受賞されたバンドの皆様、おめでとうございます。

【文部科学大臣賞(グランプリ)】 氷菓(東京・正則高)

【準グランプリ】 Camellia(高知・土佐中高)、フランスの真実?(愛知・名東高)

【審査員特別賞】オリビス(神奈川・岸根高)、ヒガシジャズ研(福岡・東福岡高)、霹靂(奈良・奈良育英中高)、Mercury(千葉・市川高)、E.S.S.S.(大阪・近大付高)、Eager beaver(奈良・奈良育英中高)、しゃくしゃクラゲ(埼玉・所沢高)、Lminaly(静岡・加藤学園高)、mikata.(東京・小川高)、I Vector I(京都・同志社中高)、X(神奈川・藤沢工科高)、Parasols(愛知・名古屋たちばな高)、The Black Pegasus(高知・太平洋学園高)